携帯は持たない

年末に喪中葉書が沢山届くようになり、1回中断すると再開し難く、年賀状もそろそろ出すのをやめようかと思っている。今年はなんとか出したが年ごとに内容の薄い儀礼的なものになって行く。ところが出す方は年々鬱陶しくなって行くのだが頂く賀状は嬉しいものだ。干支が印刷されただけであっても紙背に思いがあってお幸せを祈りたくなる。ひとこと添えられていれば尚更だ。

拙い現状報告の中で、『未だに新幹線と航空機に乗ったことがない』と半分自虐的に、幾らかは快挙?のつもりで書いた。ところが意図に反して某先輩から、『こちらは未だに携帯を持っていない、新幹線や飛行機未搭乗を誇るなど甘い』と強烈なカウンターが飛んで来た。


そうだ、なぜ携帯なんぞを使うようになったのだろう?



機械音痴、I・T音痴の老人は当然当時出始めたパソコン、携帯など文明の利器には胡散臭い印象しかもっていなかった。ところが生業のタクシー業界では、2000年頃から技術革新と合従連衡の動きが加速し、割引率の高いチケット契約で大手顧客を囲い込むような営業も激しくなって来た。スケールメリットが顕わになれば小さいところは競争から脱落する。無線チケットのお客様が車を必要として呼んで頂いても、繁忙時間に回せる車の絶対台数が不足して来るからだ。   

2002年(平成14年)東京の下町東部に根を貼っていた15~6社約1000台の老人らの無線グループは西部城南東京全域を広く営業区域としていた40数社4000台以上のグル-プと合流・吸収されることになった。その後6000台規模に膨れて営業形態も多様になり、遠慮なく電子化が押し寄せて来た。AVM無線やカード決済端末が標準装備になってカードで支払いが可能になり、一日50人ほどのお客様の中にお一人、お二人とカードで乗車される方が出て来た。  カードご利用の方は遠距離、高額の事が多い。するとカードの与信確認が必要になり、深夜郊外などで確認する必要が出て来る。

(AVMは、Automatic Vehicle Monitoring Systemの略称。)
運行管理室(配車室)に於いて移動する車輌の動態(車輌ID、位置、実空車、迎車、待機設定、休憩、食事、緊急、etc)をモニター可能なシステムの事。
これにより、注文された利用者に最も最適な車輌を自動的に選択配車する事が可能になると同時に、車輌の一元管理が容易になった。




迫られてやむなく老人も最小限の機能契約で携帯端末を持つようになった。 今はないJフォン、ボーダフォンという会社のものである。使い方も最小限のことしか判らず、他の機能など全く使えなかった。そういうある日相模原市まで深夜にお客様をお送りしてメーターが1万5千円位になった時、問題のカード支払いに遭遇した。ピッと端末にカードを通しても承認の応答がない。お客様は酔っておいでで現金は持っていないし、カードでOKと表示してあるから乗車したと仰る。そこで慣れない携帯を使って予め教育されていたカード会社の与信センターにかけた。午前2時・東林間駅前!  

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細かいやり取りは憶えていないが、なんでもそのカードは海外、香港かどこかで契約されたものらしく、16桁のうち4桁の番号のどこかにそいういうサインが入っていて国内で有効の契約とは基準が違う、というような事だった。カード会社が世界展開すれば当然そういう海外でのカード取得・登録もあり得るわけで今は当たり前かもしれないが、以前は海外決裁も可能な便利なカードというような宣伝で売りこみをしていたように思う。

結局お客様は後ろ向きに手をひらひらしながら闇に消えて行き、そのまま悄然と帰ってひと月経ち、給料日になって課長から、『座間の1万5千円だけど決裁できないとカード会社から言って来たからカットするぞ、その分自己負担だ!』と言われた。納得できずカード会社に電話をかけ、『何月何日深夜に与信確認で連絡したものだけど当日の記録を調べて貰えませんか?』と問い合わせた。

何日かやり取りして結局海外契約のカードの限度額や引き落とし方法の違いを理由に、日本国内での利用でカード決済を悪用する者がいる、というような説明で、ともかくその日与信確認の手続きを採っていた事は記録から確かなので、事後救済する、というような扱いになり、翌月の給料日で復活救済とされたような記憶がある。

タクシーは2005年(平成17年)に降りたがその後ボーダフォンがどこかに吸収されて、再手続きが必要になりボケ徘徊の予防のためにも契約を更新して現在に至っている。今でも簡単なメールくらいしかできないが、そこそこ便利に使っている。  ゲームとかアプリとか全く使えないので未だにアイパッドとかスマホとかには近付いていない。  フェイスブックもツイッターもラインも判らないままだ。

そういう訳で残念ながら「携帯を持たない」と言う選択は、必要に迫られて叶わなかった訳であり、その1回だけだったが携帯は本来のカード決済の与信確認という役には立った訳である。老人の現役の頃は乗降地、時間、メーター料金などを日報に書き終業時に電卓で手計算して納金したものだが、退職して9年、今ではSDカードやメモリーカードを差し込むだけで全ての営業記録が電子化され日報などというものは無くなっているということだ。


新幹線の通じる大都会や国内外の要衝に、請われて馳せ参じる必要もなく、かと言って、観光教養遊山のために悠々赴くような経済の余裕もないまま、この齢になってしまい、航空機未利用は何時まで続けられるか偏屈の2字を頭に頂き、無能の2字を懐に抱いて日を送っている。



日本中で最後まで携帯を持たない一人にならむと決意を表明しながら『新幹線飛行機未利用如き……』と叱咤してくれた方の弟さんは御存命なら老人と同じ年頃だそうだ。

そしてここでも善人は若死にするというか、無情の掟が流れていて無為徒食の我が身を愧じるばかりである。




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