県庁の食堂で考えた事

ここ何年か、年に数回水戸の県庁に行っている。  ナナハンで2時間以上はかかるから、傍から見れば物好きな、もっとはっきり言えば無駄なことをしているな、というところだろう。 自分でも激しくそう思っている。


資料が欲しくて情報公開の手続きなどに行くのだが、これまで5~6年、十数回か遠征していて県庁の食堂を利用したことは一度もなかった。なんというか、老人のような下々の貧民が足を踏み入れるようなところではない気がしたし、次長や課長など高官が醸し出すセンスに馴染めないというかロビーの片隅で食べるパンの方が気楽だったからである。 お昼時沢山の職員の方が寸暇を惜しんで食事をされているのを邪魔したくなかったりした。心理的な劣等感のような説明しがたい、何か近付きたくない感覚が拭えなかった。


先日4月13日に監査請求を出し、記者クラブでのアピールが終わって、さて帰ろうとして時間が、12時40分ころ、と中途半端になったことに気が付き、もうピークは過ぎたかもと思い直して監査請求提出者にお付き合いして食堂に向かってみた。 盛りそばと刻印された食券の札を取って、数人の後ろに並ぶが勝手が判らないでいると親切な方が、お盆の取り方や箸の場所を教えてくれて、会計に進み、広い部屋の隅で美味しく食べることができた。

食堂は4人掛けや8人掛けのテーブルが7~80もあるだろうか、3~400人が同時にくつろげるような広さがあり、賑やかに騒めいていた。 それでも食堂の残り半分は別の空間に広がっていてそちらにも5~60卓のテーブルが備えられていてこちらにも数百人が座れるようだ。洋食とそばなどに分かれているのか、どんな様子かはわからない。 26階建ての高層庁舎に1千人以上の職員がいてその賄を一手に引き受けるのだから相当に忙しい筈だ。


で、見るともなく見ていて、そこが食堂だから当然と言えば当然だが、暖かい団欒というか、食べる喜びというか束の間の休息というか、寛ぎ弾む会話と、一寸した華やぎというか温和な幸福感が漂っているように感じた。 老人もおなかが膨らんだのでゆったりとした気持になった。


このところ自治体の職員や議員を指して税金泥棒などと何度も書いているので心がささくれてしまい自業自得で安定にかけていたが、周囲の皆さんが善良で知的な能吏であることに間違いはなかった。ジョン・プレストンが言うように彼らも頭が二つあって緑色の耳をしているわけではないようだ。暴力団が避け難く纏っている、野蛮さ、理不尽さ荒々しさなどの、陰惨で険しく、危険な印象がないから、どうしても知的集積の塊、と思える。 


生協の売店に行くと、公務員の書式とか法令解釈とか、日常の仕事で使う用語、回答例などの本が何冊も置いてあった。
茨城県、法制研究会監修の「文書事務の手引」2,980円という本。  「分かりやすい公用文の書き方」という本は
「(従来の憲法解釈との)法的安定性は関係ない」と言い放った首相補佐官の磯崎陽輔さんの著で1,954円。   「地方公務員ダイアリー」という日記兼用の本は1,283円だった。


パラパラと捲ってみると、公文書や、役所の用語では吃水は使わない→喫水を使う。  饗応は使わない→供応を使う。 計理は使わない→経理を使う。  繋留は使わない→係留を使う。  捺印は使わない→押印を使う、などと法律や公文書に使う用語について例示があった。   なるほど、食堂で寛ぐ皆さんは普段からこのような研鑽を重ねながら、窓口で市民住民に対座しているわけだ。  これでは我々が資料が欲しいと求めたり、こうして欲しいと要望したりしても簡単に受理して貰えないのは当たり前で、用語用法からして無知蒙昧な我々と、彼我に隔絶した落差が日々生じている訳である。 


老人は、選管や議会事務局の職員が、選挙費用公費負担の制度や政務調査費の交付制度などを運用・適用するとき、条例などを殊更に狭く解釈し、まるで関係資料を求めることや、内容を点検精査することが即重大犯罪ででもあるかのように、なぜ圧倒的に忌避、回避するのか不思議に思っている。首を左右に回せば視界が広くなり、手も足もあるのに、自ら手足を縛っておいて頑なに正面だけを見ながら、関係書類の提出を求めるようには条例・法令・(覊束は使わない→規則】・細則・手引・指針・要綱などがそうなっていない→から求めない、と自閉することに深く疑問を持つ。

が、日常から、冷暖房、高速エレベーター装備の高層環境で、法的安定性は関係ない、と豪語するような政治家の本に用語用法を学んでいれば、朱に交わって赤くなるように鍛えられて、やがてそういう資質を獲得するに至るのではないかと思った。
画像
    茨城県庁


天井の高い、広い食堂のざわめきは1時を過ぎる頃いくらか閑散とし始め、私達は食器を返して室外に出、もうすぐ76才になるという監査請求提出者と、そのまま左右に分かれて帰路についた。帰り着くまでに脳梗塞や心臓発作にならないよう祈るばかりだ。


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